6月 23 2005

それにしても、どうしたことか。

Published by kitaura at 12:26:17 under 一般,体験談

●入学式。およそ普通の中学生が抱えることのない車一杯の荷物を携え、あの坂をのぼった。それにしても、どうしたことか。入学式に布団、洋服、洗面器、バケツ…。僕の選んだ中学校は、小さな田舎町の丘の上。家族と別れて寮生活。今思えば、あの大げさなほどの荷物の量は、きっと家族と自分の不安の分だけ、本当にちょっと大げさだった。だけどみんな、やっぱりそうやってあの坂をのぼってきた。家族と別れた生活であったが、仲間がいた。電車のない町であったが、森と湖があった。ゲーセンはなかったが、教会があった。離れていても家族の支えがあった。そして、およそ普通の中学生が抱えることのないたくさんの経験があった。だから、何度もあの坂をのぼったのだ。あれから、15年。僕の掌には、たくさんのよき師と、たくさんのよき友と、たくさんのよき経験が刻まれている。一人一人を思い起し、その名を呼びたい。それにしても、どうしたことか。この掌の重さは。あの日の荷物は、僕のかけがえのない財産にとってかわった。ひるがえって今、まだ坂の途上。荷物のかわりに、たくさんの出会いと経験を携えている。〔1989年度卒業 山田信宏〕

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